恋のソリューション
いったん仕事が始まってしまえば、毎日夜遅くまで残業、土日も休日出勤はあたりまえ、クライアントの無茶な要求に終日イラついて、ストレス溜まりまくりの毎日になるのは目に見えてるんだから、今の、定時で帰れる健康的な生活は、大いに喜ばしいはずなんだけど。
こんな生活を2週間も続けてみたら、どうやら私は仕事が大好きらしい、ということに気がついた。

入社して6年。正直、辞めようと思ったことは何度もあったけれど、それでも続けているのは、SEの仕事が好きだから、なようだ。

あーぁ、私も早く、どこかのチームの応援に行きたい。
受け入れ先、ないのかなぁ?

そう思いながら、PCを立ち上げてたら。

「おーい、阿久津(あくつ)ちゃーん、ちょっといいかぁー?」
背筋を伸ばしてモニタの向こうを見ると、マネージャー席の名護屋さんが、私に向かって手招きしている。

名護屋さんは、システム開発グループのマネージャー。
第1から第6までのSEチームと、グループ全体の営業を担う営業チームを率いる各チームのリーダー直属の上司だ。
短髪で、趣味の釣りのせいで年中黒く日焼けしている、精悍なイケメンマネージャー。
もう40代後半になるはずだけど、とてもそうは見えない若々しさで、フットワークの軽い、ついでに口調も中身もやや軽い人で、女子社員のことはみな、ちゃん付けで呼ぶ。
それがセクハラだとか差別だとかの問題にならないのは、ひとえに名護屋さんのキャラクターのせいだろう。
親しみやすく、みんなに愛されていて、憎めない。いや、あの人には言ってもムダだと諦められている、……のかも。

それはさておき、名護屋さんに呼ばれた私は、元気に「はいっ!」と返事して、イスから立ちあがった。
そして、気付いた。
あれ? 名護屋さんの前に、立ってるのって……。

……陣野(じんの)さん!?
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