黄砂の降る町
「ありがとうね。智君」
私はそう言って、少年と彼の伯父さんに頭を下げた。
そして頭をあげた瞬間に、嬉しそうに笑う少年の顔が目に入る。
一つ目の宝物を掘り出したような気分。
汚かった町が、少し違って見えた。
そのまま、後ろを向いて歩きだした。
来た時よりも、力強い足取りで。
「……あのっ」
その声に振り向くと、少年の伯父さんが少し赤い顔をしてこちらを見ている。
「もしよかったら、お茶でも飲みませんか」
宝物は、もしかしたらすごく近くに隠れているのかも知れない。
今度はゆっくりと、大事にそれを掘り起こしてみよう。
【fin】