黄砂の降る町
智と呼ばれた少年は、彼に笑顔を向けると得意そうに言った。
「たんけんしてたんだよ」
「また訳分からないことを言って!
すいません。目を離した隙にいなくなってしまって」
ぺこりと頭を下げたその男性は、パーカーにジーンズといったラフな格好。
目尻が少し下がっていてとても優しそうな雰囲気だ。
「いえ、ちょっとお話してただけですから」
「でも、何か言ったんじゃないんですか?
その、目が」
そう言われて、私は目が涙で腫れていたのを思い出した。
慌てて手で隠したけど遅い。
男性は怒ったように少年を見た。
「ぼくじゃないよ。おにいちゃん」
「お兄ちゃん?」
兄弟にしては離れすぎている年に疑問を投げかけると、彼は笑って小首を傾げた。