貧乏お嬢様と執事君!
「………気にしないで」
椿野は無感動に女子を見下ろした。
鷹司は笑顔で
「うんっ!仕方がないよ!」
と簡単に許してくれた。
少女はほっと息を吐きもう一度お辞儀をして、二人の元を去った。
その背が遠くに消えるまで待つと、椿野は呆れの表情を浮かべる。
「………なんで返してあげなかったの」
鷹司の右手の掌に握られている500円玉を見て言う。
それにしてもすごい早業だ。
腰を素早くかがめ、女子が振り向く前に自分の懐へと忍ばせるその腕は達人級だった。
小銭を奪い取る達人は、へへへっとなぜか誇らしげに鼻をこすり
「だって、あの人悩んだんでしょ?
500円もの大金を拾うのに!そんな人のところにいる500円がかわいそうだよ!」