貧乏お嬢様と執事君!
銭湯上がりのおっさんが牛乳を飲み干すかの如く腰に手を当て、ぐぐぐっとオレンジジュースをあおった。
「っぷはー!掃除後のジュースは格別だねー!」
見事においしそうに啜る鷹司のまねをしようとお嬢様はプルタブを開けた。
こくこくと上品に煽り、疲れに染まった顔色を歓喜の色に染めなおす。
「美味しいわ!」
「うちの家に自動販売機を投入しようかしら」
そんな冗談を言うまでお気に決めしたようだ。
成り行きで買ってもらった椿野は、釈然としないまま炭酸グレープを啜りあげた。
カイトがいたなら、お嬢様らしからぬ行為に卒倒するだろう。
卒倒まではいかなくても熱をだして倒れる前にはいたるかもしれない。
他人事のように椿野は思い、炭酸のはじける味に酔いしれた。