貧乏お嬢様と執事君!
お嬢様、お昼時のお弁当は残さず食してください




カイトの朝は太陽が昇り始めたころに始まる。


寝起きがいい彼はぱっと薄暗い畳部屋から身を起こし、窓を開ける。


優しい春風のような風に包まれ、そうっと目を細めるその姿はまるで一枚の絵画のようだが、屋敷がぼろい一戸建てなので決まるものも決まらない。


さっさといつものダークスーツを着込み、鏡をチェックする。


自分の美しい美貌に酔いしれることなく鏡から目を離し


「………めやにが取れない」


と美青年らしからぬことを呟いた。


ギシギシときしむ床の上を進む。


低い天井に少し身をかがませ、台所へ悠然と降り立った。


適度な速さで顔を洗い、そこら辺にあるタオルを手に取ろうとしたが


「………これはお嬢様にお使いいただこう」


執事は何事にも動じない。


たとえ顔がびちょびちょでもだ。



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