貧乏お嬢様と執事君!
「最後の高校生活だからね!思いっきりエンジョイしてくるよ!」
彼女は心躍る笑顔で背伸びをした。スカートが短くなったようだ。彼女の成長が目に見えた。
「そうですね。楽しんできてください」
カイトは胸に手を当て深々とお辞儀をした。
お嬢様の成長を喜べていない自分がいるのが嫌だった。顔に出ていないか心配だったので礼をしたようなものだ。
鷹司がじっとカイトを眺め、何か言いたげに口をもごもごさせていると
「沙良。行くわよ」
前髪をちょっとだけ切った椿野が声をかけた。
「鷹司さん!君の襟もとについている金バッチも君の輝きに比べれば鉄くずみたいなものだよ」
髪にピンクの花を大量にのせている井筒が椿野に続いた。
きっと椿野に突き飛ばされて桜の木にぶつかったのだろう。
「貴方はごみくずだけどね」
「なっ!何だと!?」
お決まりの口げんかを始めた二人の間をイライラしている影が間に入ってきた。
「遅刻しちゃうじゃない!早くしなさい愚民どもが!」