貧乏お嬢様と執事君!


「ああは言ってっけど。天の邪鬼だからあいつは」


「………わかってますよ」


前ほど姉を恨んでいないということは。


そう告げると、レンが嬉しそうに目を細めた。


「そうか。ちょっと丸くなっただろあいつ。跡取りはそっちの嬢様にするって言われた時も頷いただけだったしな」


跡取りは姉の沙良に決まった。


もともと享一郎は由姫華ではなく、鷹司に決めていたそうだ。後継者たるものいろいろな世界を知ることが大切なのだ、と皺だらけの口元を歪ませていた。


「見たところ、沙良にはもうその力が存分についている。だから帰ってきてもいいぞ」


享一郎は鷹司を呼びそう誘ってくれたのだが、彼女はありがたく辞退した。


「私はカイトと暮らしてもっともっと世界に視野を広めたい!」


享一郎は笑顔でそれを承諾した。



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