貧乏お嬢様と執事君!
時はさかのぼり数時間前。
『ねえ。今日、一緒に渋谷にでも行かない?』
鞄に教科書を詰め込んでいる鷹司に身を乗り出しながら誘う。
お嬢様が出歩くといえばそんなところしかない。
だが、ニセお嬢様にはどうなのだろうか?
『古服屋とか?いいね~』
『………うん。まあ』
ブランドをぶらつこうと、椿野はその言葉をツバとともに飲み込んだ。
そういえば、この美しい美貌を持ち、優雅で高貴で一本の白薔薇を思わせるこのお嬢様は。
本当のお嬢様ではなかったのだった。
今にも壊れそうな一戸建てに一人の執事と住んでいる貧乏お嬢様は、曖昧な微笑みを浮かべ
『でも、今日は外せない用事があるんだ』