初恋プーサン*甘いね、唇
「いいね?」
トレーニングがひと通り終わったころ、彼の声がした。
「……は、はい」
舌で唇を湿らせ、真一文字にして待っていると、私の鼻に彼の鼻がかすって目を開けた。
角度のことは考えてなかった、と向きを調節して、もう一度目を閉じる。
すると、今度はぶつかることなく、唇の上へ弾力のある感触が遠慮がちに乗っかった。
未体験の行為に身体が強張り、唇の代わりに肩がすぼむのが分かった。
しかも、鼻息に注意するあまり、さっきから息をすることを忘れていたために、最初のキスは、私の息苦しさのせいで2秒とかからず終わってしまった。
息を継いでいると、彼は「もしかして」と言った。
「初めて?」
「初めてです……」
彼は「大丈夫」と右手で何度も斜めに髪を梳いた。
「ぼくもだから」
二度目のキスは、スムーズだった。