初恋プーサン*甘いね、唇
彼は、上手く鼻がぶつからないよう顔をずらし、私は大きく息を吸いこんで臨んだ。
さっきより強く抱きしめられ、比例して唇も強く押し当てられた。
裾を握っていた手を徐々に首元まであげ、キスしやすいように身体をそっと傾ぐ。
押さえつけた唇は、汗をかくように湿り気を帯び始め、軽いものからその趣を変えていく。
「……んん……ぅ……ぁん」
なんとも言えない高揚感だった。
雑踏が耳から切り離され、聴覚が全部この行為にだけ反応していた。
湿った唇を離すたびに名残惜しむような音がして、その都度うなじのところをくすぐられている感覚を覚えた。
最初は、ただ押しつけるだけのキスが、コツをつかむにつれて上と下の唇をそれぞれめくるような動きになり、刺激のレパートリーは増えていった。
「……んっ……」
息継ぎにも慣れ、感触を楽しむ余裕さえ出てきた。
さながら、口づけの半身浴といったところだ。
途中から誰かに見られている気配が四方からしていたけれど、それももう関係なかった。
臆病な私は、ひとまずお預け。
旅の恥はかき捨てっていう名言もあるくらいだし。
何よりここは、ほとんど眠っている間に着いた国だから。
まだ夢を見ているんだ割り切れば、どうってことはない。
私が目を閉じている限り、目覚めはしないのだから。
いつまでも、ずっと――。