初恋プーサン*甘いね、唇
ウソ偽りのない事実だった。
彼に待ち続けた時間を告げた今、初めて美咲に言われたことが理解できた気がした。
私という人間は、相当の情熱家だったらしい。
初恋を貫いて成就させた、相当「一途」な。
「あれ見て」
彼が店の上を指差した。
見あげてみると、自動ドアの上にアーモンド型の大きな看板があった。
ピンク色の二重枠の中に、チョコレート色の筆記体で「poussin」の文字、そして両端には、向き合った黄色い小鳥の絵が描かれている。
箱に描かれていたものと同じロゴだ。
「プーサン……」
うん、とうなずきながら、彼はゆっくりと私の腰に手を回してきた。
拒否する理由もないので、私は素直に受け入れ、ついでに身体を心もち彼のそばに寄せる。
誰にも見られる心配のないブルーシートのおかげで、私はシャンゼリゼのときみたいに、多少は積極的女性であれた。
この青い緞帳がおりている間は、私たちだけの舞台。
「プーサンって、どういう意味なんですか?」
「それはね――」
私の頬にかかっていた髪を両手で後ろへ流し、彼は目で合図を送った。
アイコンタクトをしたことはなくとも意味は理解でき、私はそっと首を傾いだ。