初恋プーサン*甘いね、唇
彼の外見は、特に際立った美形でもなく、背の丈は170センチくらい。
紺色のブレザーに身を包んでいるという、他の生徒と大した違いのない感じ。
私の理想は『ニューヨークの恋人』のヒュー・ジャックマンだから、鼻の高さも、彫りの深さも、国籍も、似ても似つかない。
3歳くらいの子供が描く、教育テレビのキャラクター絵くらい違う。
なのに、ここまで執着するに至ったのは……。
一眼レフのカメラを夕空へ向け、シャッターを切り終えたときの、橙色を受けた横顔だった。
対象物の夕陽か雲か、とにかく彼方を見やる表情に、私は心ごと持っていかれてしまったのだ。
――せつなにして。