初恋プーサン*甘いね、唇
.○chapitre2:ヒヨコとカラス
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再会は、先月。
梅雨真っ只中の午後。
誕生日を迎えて私が26歳になった、6月第1週の土曜日だった。
いきなり、勤めている地元の小さな図書館に、彼がやってきたのだ。
10年前の面影を特にいじることもなく、しっかりと残した姿で。
映画好きだった私は、まるで『ビフォア・サンセット』のジュリー・デルピーに成り代わったような再会だと興奮したけれど。
事実は、映画ほどロマンチックかつ、ご都合的には展開してくれなかった。
図書館では、毎週土曜日に子供たちのための朗読会が開かれる。
読書離れを抑止することや、読み聞かせをすることで興味を促し、教養と感情の豊かな未来を育むという大義名分をこめてのイベントだ。
実際は、図書館離れの抑止にウエートを置いていると思うけれど……。
そんな朗読会で、彼がボランティアの朗読者として来館してきたのだ。