初恋プーサン*甘いね、唇
。・*○*
――カランカラン。
「いらっしゃい……あ、雛ちゃん」
マスターの声に、なんだか家に帰ってきたような安心感を覚えた私は、空いていたいつもの席へ座った。
店内は、テーブルにカップルと、カウンターの一番左端にスーツ姿の中年男性がいるだけだった。
店自体はこぢんまりしているから、結構繁盛しているほうかもしれない。
「珍しいね、こんな時間にひとりで来るなんて」
マスターは、おしぼりと水を、手早くカウンターに置いた。
「はい、ちょっとお腹が空いちゃって」
「お?デート中に食べてこなかったのかい?」
「デート?」
どうしてそれを?と口にする前に、マスターは笑って言った。