初恋プーサン*甘いね、唇
「はい。お願いします」
私ってば、何をしてるんだろう。
「ふう」
グラスの水を、一気に半分ほど飲んだ。
一途が取り柄だったはずなのに、別の男の人と映画見たりなんかしちゃって。
それくらいデートのうちに入らないのかもしれない。
けれど、私の良心は許してはくれない。
終わってからじゃ遅いけど、今さらに後悔してしまっていた。
それでいて、後悔している自分から抗う、別の感情があったりもして。
――市村さんだって彼氏候補にしていいじゃない。
という、感情。
――なんで司さんのことで悩んでる時期に市村さんが。
という、戸惑い。
私の心で、勝手にひとり歩きする争い。
「お待たせ。特製ナポリタン」
目の前に置かれたパスタの香りに、私はひとまず考えを端に寄せた。
腹が減ってはなんとやら。
それに、迷いにつぶれそうな心を、何かでごまかしたかった。
「美味しそう」
「仕入先を変えて、いいソーセージが手に入ったからね。混ぜてみたんだ。たらふく食べなよ」
「はい。いただきます」