初恋プーサン*甘いね、唇

フォークでソーセージをさして、パスタを巻いて口に入れる。


いつもより歯ごたえのあるソーセージが、たしかにいい味を出していた。


「どうだい?」


かもめのような、太めの眉をひょこひょこと動かして反応を催促するマスターに、私は素直に「おいしいです」と答えた。


「すごく」


「よかった。味が違う!ってクレームがきたらどうしようかと思ったよ」


「そんな。ソーセージの歯ごたえが変わって、新鮮でしたよ」


「うんうん。雛ちゃんなら分かってくれると思った」


お世辞じゃなく、喫茶店のパスタにしておくのはもったいない味だった。


手早く作ったにしては、凝った感じの深みがあるし、ナポリタン特有の濃厚さも適度にしてある。


いつもは家で自炊をする私は、いろんな料理をマスターに聞いたことがあるけれど、これもまた今度聞いてみようと思った。

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