初恋プーサン*甘いね、唇
「ふらっとすると『不純』になるなら、おじさんは『不純物の塊』になっちまうからな」
ゲラゲラと笑うマスターの言葉は、けれど私の心の重荷を軽くしてくれた。
マスターは、ただ一緒に悩んでくれるだけじゃなくて、さりげなくアドバイスもくれる。
かと思えば、ただうなずいているだけのこともあるし。
その使い分けが、ものすごく上手い。
こうすべきだって分かってる悩みのときは、うなずくだけ。
答えが出てない悩みのときは、最後に冗談混じりのアドバイスを添える。
私は、
「マスターが、もっと若ければ、理想の人だったのになあ」
なんて笑い返しながら、汗をかいたグラスを撫でて、一気に飲み干した。
「ともかく、どっちがいいかなんて、あとあと。今は、次の意中の彼のことを考えればいいよ。な?」
「はい」
「元気出せ、雛ちゃん。やるしかないぞ!」
「はい」
「よし。じゃあ、もう1杯サービスだ!」
「えええっ」
こうして、パスタ1皿、お水1杯、それにアイスティーを2杯も飲んだ私は、水分で身体がちゃぷちゃぷ音がしそうになりながら、お店を出た。
満腹のお腹と、大きな気力をたずさえて――。