初恋プーサン*甘いね、唇
夕陽が沈みかけて薄暗くなってきたころ、ようやく徒波程度に落ち着いてきた。
いなくなったことのショックは到底消えてくれそうもなかったけれど、気持ちはちょっとスッキリした。
それは、泣いている途中に彼の「またね」を思い出したからだ。
「元気でね」でもなく「さようなら」でもない、前向きな別れ。
いつかまた会えるかもしれない希望がある。
きっと彼は、この本を探しに戻ってくる。
私は、その予感さえあれば生きていける気がした。
例えそれが叶わなくても、望みさえあれば明日を過ごせそうだから。
(本はずっと私が借りていよう)
そう思いながら、何気なくもらった写真をバッグに戻そうと裏返したら、そこにはカクカクした男らしい大きな文字で、メッセージが書かれてあった。
――1年間見守ってくれて、ありがとうございました。