初恋プーサン*甘いね、唇
.○chapitre5:今日でおしまい
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ついに、と言っても過言ではない土曜日。
雨が降り注ぐ朝の通りは、ただでさえ行きたくない気持ちを、さらに増幅させる。
昼過ぎからは一転して晴れになるらしいけれど、図書館にいるときより、今晴れてほしかったのにと、無茶な文句を口の端で泳がせる。
ケヤキの葉に当たる雨粒の音が、私の赤い傘に当たる音と絡み合って、憂鬱なハーモニーを否応なしに奏でる。
アスファルトのくぼみにできた水溜りをパンプスがとらえ、足先に嫌な感触が広がった。
歩くたびにシュポッ、シュポッと水気を帯びた靴底を踏む音が響いてきて、いっそこのままサボタージュしようかとも思った。
先週の日曜日からずっと思っていたけれど、私のこんな憂鬱な気持ちは、本当に片想いと呼んでいいのだろうか。
美咲の言う通り、胃が痛くなったり、こんな感じで憂鬱になるのが恋と呼ぶのは、おかしい気がするんだけど……。
「もう、いや」
歩を出すたびに鳴る、赤ちゃんの靴みたいなパンプスをにらみつけながら、私は朝から疲れている自分に気づいて、さらにどっと疲れてしまっていた。