初恋プーサン*甘いね、唇
「そう?」
「はい」
「まあ今日は朗読会だから。子供たちが来て賑やかになれば、沈んだ気持ちも自然と浮かんでくるよ」
悩みを無理に問い詰めようとするわけでもなく、ただいつものような笑顔とちょっとした言葉をかけてくれる優しさに、頭が下がる思いになる。
引き合いに出して悪いが、美咲には到底出来ない芸当だ。
「そうですね。ありがとうございます」
お礼を言うと、館長は、
「早速だけどパソコンの起動を頼むよ」
と笑って、書架の整理に戻っていった。
「分かりました」
館内のパソコンを全て起動させてから事務所にバッグを置いた私は、ほどなく来た美咲と博美さんたちとともに、開館の準備にとりかかった。