風子仕様の恋模様。

乱れたスーツを軽く整えながら会社へと向かう。


ビジネス街をヒールを鳴らしながら歩く…できる女みたいでかっこいい!なんて思って就職したものの、現実は理想よりはるかに厳しかった。

その現実にもみくちゃにされて、辞めた同僚もたくさんいる。
私だって何度泣いたことやら…ただ元来の負けず嫌いな性格がそこから這い上がる力をくれた。


そして気づけばそこそこのお給料を貰い、上司からの信頼も得ていた…

まぁ上司からの信頼はどうかわかんないけど。
お給料はまぁまぁだよ。


自分の好きな時に好きなことができて、気づけばどんどん結婚から距離ができてたなぁ。

私はそれでも良いと思ってるけど、これからは母をどうするかよね。


うんうん、と一人頷いていると後方から軽快なヒールの音が聞こえてきた。



「おはよっ!何朝から考えこんでんのよ!」バシッ!


と肩に平手が入るが、その手には見事なネイルが施されてる。


「おはよ、茜。

ってゆーかすごいネイルね。」


「新作。

チーフに見つかんないようにしなくちゃ。」


そう言って笑う顔は妖艶で実に色っぽい。


藤堂 茜(トウドウアカネ)
私と同期の29歳!独身!


大切な親友だ。
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