有馬さんは宇宙人
帰路は寒かった。
立ち寄ったスーパーで晩御飯の材料と誘惑に負けて買ったお菓子。それを両手にぶら下げ、顔はこれでもかとマフラーに埋める。
いつもみんなに猫背だと言われる背中を更に丸めて、何となしに有馬さんのことを考えた。
まさか宇宙人だったとは。
色んな意味で人間としてどうなんだろうと思ってはいたけれど、これで納得だ。
そうか宇宙人だったのか。じゃあ仕方ない。
理屈とか根拠とかは俺には必要ない。有馬さんが人間だろうが地球外生命体だろうが、まあ別にどちらでもいいのだ。
「お前は飲み込みが早い」と5年前死んだ父さんに褒められたことがあった。これは俺の良いところなんだから、この長所はこれからも伸ばしていけばいい。
同級生に宇宙人がいる、という現実をこうも簡単に飲み込める俺。きっと天国の父さんも息子の成長を喜んでいるに違いない。
なんて親孝行な息子なんだろう。
とりあえず、明日から地球防衛軍として頑張ろう。白い長髪の宇宙人を思い浮かべる。
「まあ、もうそんなに会うこともないだろうけど」
自分の家の玄関を開ける。
リビングから出てきた母さんが「まーたこんなに買ってきて!」とヒステリックに叫んだ。
01.end