有馬さんは宇宙人
無駄に高い位置から水を放つ有馬さんの姿は、異様にも見え、そして何故か美しかった。
花に降り注ぐ水滴が太陽に反射し虹を造る。同じように彼女の髪もまた、キラキラと輝いていた。
普通にしていれば人間にしか見えないんだけどな。
「あー、どうも」
マフラーでくぐもった声が暖かい裏庭に響く。
有馬さんにも届いたのか、ジョウロの位置はそのままに顔だけがこちらを向いた。と思った瞬間。
もの凄いスピードで何かが俺の顔の横をすり抜けた。
「……え?」
有馬さんが球を投げた後のピッチャーのようなポーズをしている。そしてジョウロがない。
喉をひくつかせ後ろを振り向けば、先端が折れたジョウロだったものが転がっていた。
―――ええ?
「隊長に向かってなんだその態度は!“おはようございます、今日も天気が良いですね”だろうが!」
「あ、……すみません有馬さん」
「隊長と呼ばんか!」
地球防衛軍がこんなに厳しい軍隊だったとは。
「隊長、今日も天気が良いですね」
「うむ、そうだな」
さっきの迫力とは打って変わって嬉しそうな有馬さんに心の中でホっとする半面ため息がもれた。
何というかまあ、仕方ないのか。
宇宙人だし。