有馬さんは宇宙人
有馬さんはあまり普通ではない。
授業中にいきなりわけの分からないことを叫び出したり、2階の図書室の窓から身体一つで飛び降りたり、何に追われているわけでもないのに後ろを振り返りながら全速力で校内を走ったりする。
ちなみに今挙げた3つの奇行の最後尾にはすべて「らしい」が付く。
なんたって、俺は有馬さんとはクラスも違けりゃ学年も違う。
ごくごく平凡に毎日を自由気ままに過ごしている俺にとっては、有馬さんなど所詮「噂の人物」でしかなく、興味の対象外だった。
「夏目~、ノート見せて」
「ばか、コイツがノートなんて取ってるわけねーだろ」
よくお分かりで。
いつも何となく寄ってくるので何となくつるんでる連中と適当な会話をして、俺は何となく座っていた席を立った。
「まーたおさぼりかよ」
「そろそろ進級できなくなんぞ」
「まーどうにかなるでしょ」
「でた!夏目の十八番《どうにかなるでしょ》!」
後ろでギャアギャア盛り上がる奴らをそのままに俺はパックのコーヒー牛乳片手に教室を後にした。
「この自由人め!」
扉を閉める際何か聞こえたけど、まあ気にしない。