有馬さんは宇宙人
ちゅんちゅんと囀りが聞こえる。
ゆるい風に揺れるあの大木のどこかに鳥がいるんだろうな、とちょっと目線だけで探してみたけど途方もないのでやめた。
「……さむ」
実際はまだ10月にもなっていないのだが、もうそろそろこの裏庭に来るのもやめようかと思っている。
夏の終わりから秋にかけては涼しくて快適な場所だけれど、夏と冬はやはり冷暖房が完備されている図書室が一番だ。
既にマフラーが通常装備になりつつある俺にとっては、この裏庭は寒すぎる。
「君達ともしばらくお別れだね」
目の前の花壇に咲く名前も分からない数種類の花。一方的に話し相手になって貰っていたので少し寂しい、気がするようなしないような。
ちょっと寝るか、と白い校舎の壁にもたれてマフラーに顔を埋めた時だった。
「あら、夏目くんじゃないか~」
聞こえた耳障りな声に渋々顔を上げれば、俺のことが気に食わないらしい先輩方が俺を見下ろしていた。