有馬さんは宇宙人
[03] 面倒臭い生き物
「夏目!お前神だわ!」
山田は絶賛した。
俺が土日で作り過ぎてしまったマフィンを口に頬張りながら。
「あんた腕は確かなんだからクラスメートにでも売ってきなさいよ」と母さんが有り余るマフィンを見て言い捨てたので、持ってきてみたら大好評だった。
もちろんお金は取ってない。
俺の周りには何だか人だかりができている。俺の最も苦手なものだ。
「一眠りしてくるから、勝手に食べちゃってどーぞ」
まだ沢山あるマフィンの中から適当に二つだけ持って、俺は席を立った。
いつもならまたサボりか!と誰かに突っ込まれるけど、今日はみんなマフィンを頬張るのに夢中で俺の存在など見えていないようだった。
昼休憩はもうすぐ終わるが、まあ問題はない。
俺は教室を出て、いつもの場所に向かう。
体育館に繋がる渡り廊下を抜けると、中庭にいける。中庭と言っても、俺が勝手にそう呼んでるだけなのだが。
校舎と体育館の間にある、つまりはそれほど広くないただ花壇があるだけの空間だ。
渡り廊下の角を曲がる。
「お前達も水じゃ寒かろう、だから今日はお湯を持って来てやったぞ」
あっけらかんと花に水をやる有馬さんが、そこには居た。