有馬さんは宇宙人
「どうだ、温かいだろう?」
相変わらず無駄に高い位置から水を撒く有馬さん。ガムテープで修復されたジョウロからは、何故か湯気がたっている。
当たり前のようにそこにいる有馬さんに、無意識にホッとした。
「おはようございます、今日も良い天気ですね」
「遅いではないか、待ちくたびれたぞ」
自然と緩む顔をそのままに声をかければ、こちらに気付いた彼女が嬉しそうに淡い色の目を細める。
いつもの有馬さんだ。
「ちょっとミーティングでもどうです?」
自分の定位置に腰を降ろして隣に誘えば、有馬さんはジョウロを抱えとてとてと寄って来た。
なにかに気付いたのか、俺に鼻を寄せる。
「甘い匂いだ。何を隠し持っている?」
さすが宇宙人。どうやら隠し事はできそうにない。
素直に持ってきたマフィンを一つ差し出せば、有馬さんの目が乙女のように輝いた。即座に横に座り、様々な角度からマフィンを眺め出す。
「これはケーキと呼ばれるものではないか!くれるのか!?」
「うん、作り過ぎちゃったから、良かったらどーぞ」
「貴様が作ったのか!?か、感激だ…!」
予想以上の反応に、思わず笑ってしまう。