有馬さんは宇宙人


「難しいかはわかんないけど、面倒なのは分かる、ような分からないような」


 有馬さんはいつも通り真剣な顔をしていた。が、雰囲気は俺の知らないものだった。

 違う意味の、真剣な顔。なんだか妙に儚い感じ。

 横目で少し眺めて、目を逸らした。


「生きるというのは、大変なことだな」

「そう?生きるのなんて簡単だよ、死ぬ方が難しい」


 何か裏に意味を含むような言い方。だけど俺に深意が見えるはずもなく、見ようとも思わず、適当に返した。

 生きるのは楽だ。毎日なんて、何となく過ぎていく。


「貴様らしい意見だな」


 空を見つめて笑う横顔が悲しく見えたのは、果たして俺の目の錯覚なのか、そうじゃないのか。

 見上げる顔の下、マフラーから覗く色の薄い首に傷が見えた。


「つまり何が言いたかったの?」

「人間との接触に思ったよりも苦戦している自分がいるのだ」

「そういうことね」


 ちんぷんかんぷんだ。

 首元の傷はいつからあっただろうか。

 時々、有馬さんは身体に傷を作る。

 どれだけ頻繁にエイリアンと闘っているのだろうか。エイリアンとはそんなに沢山地球にいるものなのか。

 色々聞きたいけど、まあ別に重要なことでもないし、なんでも構わない。


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