有馬さんは宇宙人
俺が、寒い中毎日ここに来てしまうように、有馬さんも毎日ここにやって来るのだ。その事実だけで十分だ、理由などいらない。
これ以上は望んでないし、必要もない。下手に干渉するのもされるのも、苦手だから。
「珍しく難しい顔をしているな」
「えー、いつも真剣なんだけどな」
笑って見せれば、有馬さんも笑った。
そう、これだけで、いいんだ。
* * *
次の日、有馬さんは来なかった。そういえば、と誰もいない中庭で呟く。
「今日、金曜日だっけ」
毎週金曜日は、有馬さんは来ない。ここにも、基地にも現れない。学校自体に来ていないのか、俺の前に現れないだけなのか。
相変わらず謎の多い宇宙人だ。
「んー、教室戻ろっかな」
呟いた言葉に返事はなく、冷たい冬の風が校舎にぶつかる音が鼓膜を揺すった。
中庭で一人過ごすのがすきだったのに、今ではここで俺を待っている人が居ないのをひどく寂しく感じる。
冬だから、だろうか。
渡り廊下を歩きながら、横目で中庭を流し見た。
あれ、裏庭って―――
「あんな、広かったっけ」