有馬さんは宇宙人


 俺が、寒い中毎日ここに来てしまうように、有馬さんも毎日ここにやって来るのだ。その事実だけで十分だ、理由などいらない。

 これ以上は望んでないし、必要もない。下手に干渉するのもされるのも、苦手だから。


「珍しく難しい顔をしているな」

「えー、いつも真剣なんだけどな」


 笑って見せれば、有馬さんも笑った。

 そう、これだけで、いいんだ。




  * * *




 次の日、有馬さんは来なかった。そういえば、と誰もいない中庭で呟く。


「今日、金曜日だっけ」


 毎週金曜日は、有馬さんは来ない。ここにも、基地にも現れない。学校自体に来ていないのか、俺の前に現れないだけなのか。

 相変わらず謎の多い宇宙人だ。


「んー、教室戻ろっかな」


 呟いた言葉に返事はなく、冷たい冬の風が校舎にぶつかる音が鼓膜を揺すった。

 中庭で一人過ごすのがすきだったのに、今ではここで俺を待っている人が居ないのをひどく寂しく感じる。

 冬だから、だろうか。

 渡り廊下を歩きながら、横目で中庭を流し見た。

 あれ、裏庭って―――


「あんな、広かったっけ」


< 40 / 40 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

く ち び る
くず子/著

総文字数/49,036

恋愛(その他)116ページ

表紙を見る
オトコイ[詩集]
くず子/著

総文字数/932

詩・短歌・俳句・川柳10ページ

表紙を見る
この心臓が錆びるまで
くず子/著

総文字数/29,278

恋愛(純愛)60ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop