有馬さんは宇宙人
頭上でカーテンがひらひらしている。2階の教室の窓が開いている。だってカーテンがひらひらしているもの。
つまりはそうことなんだろうか。
有馬さんは2階の窓から飛び降りてきたんだ。と、謎が解けてすっきりした気分で前を向いたら、有馬さんが至近距離でしゃがみ込み俺を見つめていた。
「怪我はなかったか、地球人」
「おかげさまで」
「それはよかった。地球を守るのが私の使命だからな」
初めてこんな近くで顔を見た。
噂の有馬さんは噂と違い綺麗な人だった。満足げに微笑む姿は、喋り方と内容以外は所謂美人だ。
長い白髪も、人間離れした薄い色の肌によく映えている。
「貴様、夏目と言ったか」
「あ、うん」
「そうか」
どこか昔の人間のように考える素振りを見せ、有馬さんはふいに立ち上がった。
逆光で有馬さんの身体が影となる。
ブレザーの下に着ている真っ赤なカーディガンが、全体的に白い有馬さんの存在を強く主張しているようだ。
「今日から貴様も地球防衛軍の一隊員だ」
俺を見下ろして言い捨てた有馬さんは、全速力で校舎へと戻っていった。
「一隊員って、何人編成で俺は何人目なんだろ」
相変わらず、2階の窓は開きっぱなしだった。