甘い旋律で狂わせて
「一部の音楽好きのために弾くことだけが、音楽のすべてじゃないだろう?」


あたしの目を見つめる瞳の奥に、強い意志を感じた。



「食事と景色を楽しむ船上や、酒好きの集まるバー。音楽に触れたことのない人が集まるそこで、最高のピアノを弾く。それが僕の音楽のあり方だ」



ネオは静かに言った。



ネオは、先生とは正反対だと思った。


色んなコンクールに出て、その演奏を賛美されていた先生。


どこまでも上を目指して、先生は努力していた。


たくさんの人の注目を浴びながら、光輝いていた永都先生。



ネオはそれとは正反対で


光の当たらない場所で、ピアノを弾き続けているんだ。

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