甘い旋律で狂わせて
第五楽章 傷痕
その日の夜、あたしは悠貴に電話をした。


ケータイの着信履歴を見れば、何十件もの不在着信。


だけど、何度かけても悠貴は出なくて。

なんとか謝らなければという思いであたしは悠貴のマンションへと足を運んだ。



ここへ来るのも久しぶりだな……。


そう思いながら、あたしは悠貴の部屋の玄関の前に立った。



手の中には悠貴からもらった合鍵があるけれど、それをギュっと握りしめたまま使わずに、あたしはインターホンを押した。



「はい?」


出てきた悠貴の顔が、一瞬とてつもなく歪んだ気がした……。


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