甘い旋律で狂わせて
「入れよ」


昨日のことを問い詰めるでもなく、ひと言そう言ってあたしを部屋に招き入れた悠貴。



不思議に思いながらも、あたしは靴を脱いだ。



部屋に上がれば、悠貴が吸うはずのないタバコの煙たい臭いが充満してきた。



誰か来てたのかな……。



そう能天気に思ったあたしだけど

悠貴はテレビの前のソファに座って、慣れたようにタバコを一本指にはさんだ。



誰かが来ていたわけじゃなくて、悠貴が吸っていたの?




「悠貴……タバコ吸ってるの?」


吸ってるところなんて見たことがなかったから、あたしは首をかしげた。


でも、悠貴はあたしの質問に答えるどころか、目さえ合わせず、ソファをトンと叩いて言った。



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