甘い旋律で狂わせて
「悠貴、あたしはっ……」


あたしの言葉を待たず、悠貴は強い力であたしの手首を掴み、着ていたブラウスを一気に引きちぎった。



「いやぁっ……悠貴!何すん……」


「聞いたよ。何人かの船員が、おまえとあの時弾いてたピアニストが手を繋いで船を下りてるのを見たって」




……悠貴に、見られていた?




「まるで何かから逃げるように、港に着くなり急いで船を下りてたらしいじゃないか。驚いたよ。おまえが他の男をたらしこんでたなんてな」



悠貴の瞳の色に、もう優しさはなかった。



あたしの言葉も抵抗も全く無視して、乱暴にあたしのブラウスを引きちぎる。



あたしの顔など、まるで見えていないようだった。


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