甘い旋律で狂わせて
「花音」


背後からの声に、ビクリと体が揺れた。


振り返ると、上半身が裸のままの悠貴が、あたしの背に触れようとしていた。


「いやっ……」


思わず、その手を拒絶する。


しまったと思った時には、あたしの体は悠貴に組み敷かれていた。



「触れられるのも嫌か。俺はおまえの婚約者じゃないのかよ?」


昨日の悠貴を思い出し、あたしは思わず目を瞑った。


だけど、悠貴の手はあたしの頬をなぞるように触れただけだった。



「そんなだから冷めるんだよ」


吐き捨てるように言って、悠貴はベッドを降りた。



「おまえってずっとそうだよな。抱いてやっても、声ひとつ出さねぇし。本当に顔だけの女だよ」


ズキリと痛む胸を、両手で押さえた。

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