甘い旋律で狂わせて
あたしはネオに寄りそうように

そっと同じイスに腰掛けて、抱きつくように腰に手を回した。


「メンデルスゾーンね」


ネオが弾き始めたのは

メンデルスゾーンの“失われた幻影”だった。



あまりに儚く、切なく

ためらうような音色……。


ひとつひとつ響く音が

零れ落ちる涙のようだった。



昼下がりの明るくあたたかなこの空間に

あまりにそぐわない曲。


その違和感に、なんだかそれを選曲したネオを不思議に思った。

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