甘い旋律で狂わせて
「メンデルスゾーンは好き?」


指を動かしながら、ネオは尋ねた。


「うん、好き。でも……」



――この曲は、あまり好みじゃない。



悲しげな旋律に、胸が痛くなってしまう。



「もっと明るい曲の方が好き」



そう口にした時、ふと頭に永都先生のことが浮かんだ。


そういえば、先生もよくメンデルスゾーンを弾いていたっけ……。



悲しい曲も多かったけれど、明るい曲もたくさんあった。


中でも先生は“春の歌”をよく弾いていた。


あたしも先生の弾く“春の歌”が好きだった。

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