甘い旋律で狂わせて
「これから少しづつ知っていけばいいのよ。それよりも、またあなたが人を好きになれたことがお母さんは嬉しい」


お母さんの笑顔に、少し胸をくすぶる不安が和らいだ。


少しづつ、ネオのことを知っていけばいい。

ネオの不可解な部分や、踏み込めない独特な雰囲気に少し不安になったりもするけれど…。



それでも、好きな気持ちには変わりない。


考えただけで、この胸は焦がれる。



――だから、もっとネオを好きになって

きっと、すべて忘れられるよね…。




「もうすぐ、命日よね」


お母さんの言葉に、思わず顔を上げた。



永都先生の、命日。

それは太陽が燦々と照る初夏の日だった。

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