甘い旋律で狂わせて
カレンダーを見ながら、先生のことを想った。


たったひとつ、今でも後悔していることがある。



それは、ちゃんと先生にお別れができなかったこと。



最後だというのに、あたしは先生を見送ることができなかった。


先生に気持ちを伝えることも、謝ることすらできなかった。



先生の家族にも、ちゃんと謝ればよかった……。




「花音、何考えてるの?」


俯いたあたしに、お母さんは心配げに話しかけてきた。
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