甘い旋律で狂わせて
そんなことあるはずがない。


そんなことはありえない。



だけど、ひとつひとつの動きを追いかけるたびに、


“そうなんじゃないか”って


心が揺すぶられる。



ゆっくりと目を閉じ、彼は右手を鍵盤に乗せた。



その瞬間に

弾き出されるようにして、始まったワルツは


美しく、切なく、激しく


そして、甘い。

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