甘い旋律で狂わせて
「だから…かな。何もできないまま終わっちゃった恋に、まだ心の整理がついてないのかもしれない。ネオとこうしていて、ネオが好きな気持ちは変わらないのに、その人のことを考えたら胸が痛い。泣きたくなっちゃうくらいに、痛くなる」



ネオは怒るだろうか。


好きな人の腕に抱かれながら

こうして叶わなかった人への想いを口にするあたしを……。



「こんなあたしでごめんね。ネオが好きって気持ちは変わらないのに、あたしはまだ忘れられてないのかな」


不安な思いのまま、ネオの顔を見上げた。



だけどネオは無表情のまま、あたしの目をじっと見つめていて


その目を細めながら、あたしの頬に触れた。



「花音、僕が忘れさせてあげるよ」



そっと近付いてくる瞳に、目を閉じた。


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