甘い旋律で狂わせて
だけど、あまりに似すぎている。


顔だけじゃなくて、あのクールで穏やかな雰囲気まで。


そして、その長い指で繰り出される音色まで……。



まるで永都先生そのものだった。



「リクエストがあればお申しつけください。」

低くて、どこか甘い声まで似ていた。




マイクを置いて、彼はゆっくりとまた視線をこちらに向けた。


戸惑うあたしを見つめながら、彼は少しだけ口角を上げて微笑した。



「お嬢さん、何かリクエストでも?」



心の中まで透かされるような気さえする視線に、鼓動が速まる。


澄んだ透明な瞳が、あたしの顔を真っ直ぐに見据えて離さない。
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