甘い旋律で狂わせて
足を踏み入れたリビングは、とても広かった。


洗練された北欧風の家具と、窓際に置かれたグランドピアノ。


日の光が差し込む、とてもあたたかな部屋だった。



「あの…お母様は?」


「母は今、療養所にいるの。最近は精神的に安定してなくてね、自然の多いところで静養してる。父も単身赴任でこの家には私だけなのよ」


「そうなんですか……」



大きなソファに腰掛けると、薫さんは紅茶を出してくれた。

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