甘い旋律で狂わせて
双子の……弟?


混乱する頭の中で、あたしは冷静に薫さんに尋ねた。



「お名前は……?」



確かめれば、“そうでない”ことがわかる。


そう思ったあたしは浅はかだった。



“そうであること”が単に証明されるだけだと、心の奥底ではわかっていたのかもしれない。



それでも確かめずにいられないのが、人間なんだろう。



もう戻れはしない。

何も知らない自分には、もう戻れはしない。



わかっていながら、薫さんの言葉を待った。



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