甘い旋律で狂わせて
「あの、あなたは……」

永都先生なの……?


そう言いかけたあたしの言葉を止めるかのように、彼はそっとあたしの手をとった。


椅子にすわるあたしの前に膝をつき、両手であたしの右手を包み込みながら言った。



「また聴きに来てくれる?」



触れられた手が、だんだんと熱くなる。


間近で見た指先が、あまりに長くて細い。


あたしは顔を赤らめながら、黙ったまま頷いた。


すると、彼はあたしの右手にそっと紙きれを握らせた。



「僕はここで弾いてるから」



離された手の中を見れば、小さな青いカードがあった。
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