甘い旋律で狂わせて
微笑を浮かべ、あたしに背を向ける彼。


まるで引き留めるかのように、その背中に言葉を投げかけた。



「あのっ!あなたの、本当の名前は……?」



問いかけたあたしに、彼は足を止めた。


そしてゆっくりと振り返り、長い睫毛を下に向けた。



「僕の名はネオ」


「ネオ・・・?」



期待は裏切られた。


それが本名なのかも、わからない。


だけど、彼のはっきりとした口調は、あたしの疑問を否定しているようだった。



「キミの名前は?」


返された質問に、彼の顔を見上げて答えた。


「花音」


彼は鋭い目であたしを見下ろし、少し表情を和らげた。


「花音か。綺麗な名前だ」


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