甘い旋律で狂わせて
ネオはやがて有名な先生に教えを受けて、大きなコンクールに出ることが決まった。


きっと、この子はこれから世に出ていくのだろうと、誰からもそう言われた。


きっと素晴らしいピアニストになり、光溢れた場所でたくさんの人から称賛されることだろうと、誰もがそう確信していた。



それなのに……



「神様って意地悪ね。ネオの全てだった、ピアノを奪ってしまうんだから」



薫さんはそう言って、つらそうに唇を噛みしめていた。




小学校高学年の頃、ネオの体に異変が起きた。




心臓病の再発……。




それは、光溢れた場所へと向かおうとするネオを、大きな壁で阻むことを意味していた。

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