甘い旋律で狂わせて
「ピアノを弾くなら、趣味程度でいいじゃない。ピアニストにならなくたって、栄光を掴めなくたって、別にいいじゃない。……母はそう諭した。ネオの命を削るような練習に、怖くなったんだと思うわ」


こんな練習を続けていたら、いつ倒れるかわからない。


きっと命を縮めることになるだろうと、それを母親は心配していた。


「だけどあの頃から……今だってずっと、ネオにとってはピアノが全てなのよ。そんなふうに言う母の気持ちを察する余裕など、どこにもなかった」



――そのころからだった。


ネオと母親との関係に、少しずつ亀裂が走っていったのは……。


< 429 / 593 >

この作品をシェア

pagetop