甘い旋律で狂わせて
『花音』
囁くように言葉にされた名前の響きに、胸が苦しくなった。
その心地いい響きが、また先生を思い出させた。
これは、ただの偶然?
ここに先生がいるはずないのに
もしかして、と思ってしまう。
話し方や物言いは、先生とはちがうのに。
その眼差しも、その音色も、
永都先生そのものだ。
この出逢いは、偶然?
それとも、奇蹟という名の運命?
「ネオ……」
甘く懐かしいその旋律は
あたしの困惑も待たず、
静かに流れ始めていた……。